先輩移住者の声
落合さとこ さん
[山口市在住]
いつ・どこから・なぜここに?
神奈川県横浜市の出身です。メジャーレーベルからCDを出すなど、20代前半の頃から首都圏を中心に音楽活動をしていたのですが、時間が経つにつれて「ずっとこのままの形で活動を続けていてよいのかしら」と思うように。敢えて環境を変えてみようと横浜を離れていくつかの自治体を転々としました。その中で、実はさほどの想いはなかったのですが(笑)、山口に来た時に、空気がきれいで「何だか、とても良さそう!!」と感じました。それが2008年です。人が人として暮らすのにちょうど良いリズムというか。子供の頃から横浜で暮らした人間としては、ゆったりとした感覚が新鮮だったのですが、ずっと山口に住んでいる人にはこの良さはなかなかわからないかも(笑)。
現在の状況・感想
シンガーソングライターとして音楽の創作活動をしています。私の音楽工房は「猫髭うたたね舎」といいます。うたたねは「歌」と「種」をかけていて、猫の髭のように敏感に歌の種を集めてくる、という意味で名付けました。
山口のゆったりとした環境は、良い作品を創作するのにプラスになっています。それをお互いの顔が見える中で聴いてもらえることが嬉しいし、更に良い活動に繋がっていると思っています。
以前、お仕事させていただいたNHKの「みんなのうた」のような、子供からお年寄りまで楽しめる歌の番組を手掛けています。それが「山口でうまれた歌」なんです。山口市と長門市で番組が放送されていますが、県内には他にもたくさんのケーブル局があるので、もっと活動を広げられたら良いですね。
「山口でうまれた歌」の中の1曲である「卒業」は、山口大学教育学部付属特別支援学校の子供たちとの出会いから生まれた歌で、卒業する生徒さんが今も式で歌ってくれています。こんな風に人との出会いの中で歌を作ったり、心のこもった関係の中で、歌を歌う機会が増えるのは、とても嬉しいことです。
山口の魅力は?
空気というか、良い「気」が流れているように感じます。人が優しくて穏やか。魚や野菜、果物もなんでもおいしい。出会う人みんなが口癖のように、「山口は何もないところじゃろ」と言いますが(笑)、そんなことはなくて、実は「豊かさ」が満載なんです。山口県、特に山口市は文化、芸術、歴史などたくさんの資源もありますし。
山口で私が感じた良さをもっと知ってもらいたいと思い、音楽仲間を呼んで滞在してもらうことも多いです。都会ではご近所を気にしてボリュームを絞ったりヘッドホンでしか音楽を聞けませんが、「猫髭うたたね舎」は田んぼに囲まれているので、思う存分大音量で自分たちの作品を聞くことができます。時に、カエルの大合唱が加わることもあったり…。そこで、あらためてお互いの作品に気づきがあったりとても贅沢な時間なのです。
山口に住んで戸惑ったことは?
東京や都会がなんでも優れているというわけではありません。山口でも優れているものがあるわけで、地元の人にもそこにもっと目を向けてほしいなと思います。私自身も含めて、東京のものや全国的な知名度で、良し悪しを判断してしまうことが多いのが現実ですが、本当に大切なこと、目に見えない本質的なことを見極めることは、山口での緩やかな時間の中でこそできるのではないでしょうか。
それにしても、最初にJR山口線の湯田温泉駅に降り立ったときには、周りにあまりにも何もなくて、本当にここで大丈夫なんだろうか?!と驚きました。湯田温泉は山口市の代表的な観光地なので、もっとにぎやかだと想像していたので。
生活面でいうと、公共交通が少ないです。特に都会に比べてバスの値段がすごく高いのにはびっくりしました。私は普段から車移動なので今のところ問題はないですが、老後は少し心配かも(笑)。
山口に来てよかったことは?
無理なく自分のペースで日々を過ごせること。自分にとって「創作活動」=「生きること」。良い状態で生きていると、良い作品や良い創作活動につながっていきます。山口には、物質的に満たされているとか、金銭的、経済的尺度ではなく、アナログな良さとか人間らしく生きられる贅沢さがあります。人口が集中しすぎてせかせかしていることが多い首都圏に比べて、思いやりを持って暮らせる場所なんですね。
今後の展望
これからも、場所や人数にこだわらず心のこもった形で歌を届けていきたいです。歯医者さんの診療室でのコンサート、なんていうのもあるんですよ。音楽にはそれほど興味がない人や、生の音楽を聴いたことのない人にもどんどん歌を聞いてもらいたい。小学校、特別支援学校などでのミニコンサート、老人ホームや施設などの慰問活動も続けていきたいです。
移住を考えている人・移住してきた人にアドバイスを
現実的な話では、車は必要です。公共の交通機関だけでの移動は、ちょっと難しいですね。
また、自治会活動などが煩わしいと感じる人もいるかもしれませんが、希薄な人間関係ではなく、その地域のコミュニティ、人との関わりを「楽しむ」くらいで良いのでは?ご近所さんにお野菜をいただいたり、地元の情報が聞けたり、と、私は助かっています。家に営業でピンポンしてきた人とも世間話をけっこうしますよ(笑)。そのうえでダメなことはダメとしっかり意思表示をすることが必要ですけど。
山口には金銭では計れない豊かさがあると私は思います。感じ方は人それぞれなので、一度来て自分自身で感じてみるのがよいのではないでしょうか。地方でしか実現できないこともあるし、私のように山口、横浜を行き来しながら仕事をするような形もあると思います。