先輩移住者の声
西倉 慎顕 さん
[山口市秋穂在住]
いつ・どこから・なぜここに?
私は奈良県出身で、山口大学農学部を卒業後は三重県の食品メーカーで商品開発やマーケティングをしていました。山口市の地域おこし協力隊に採用されて2015年7月に着任しました。
なぜ山口でこの仕事を?
発酵という現象が好きで、大学では応用微生物の研究をしました。会社ももともとはしょうゆ醸造の会社で、しょうゆのほかにたれやドレッシング、スープ、レトルト食品などを作っていました。しょうゆの原料は大豆や小麦ですが、その生産者さんと一緒になって6次産業化も進めていておもしろかったです。その時気づいたのが、農業者や漁業者とメーカー、加工者のネットワークがないということ。そこをつなぐ役ができるのではないかと思ったんです。でもそれは、60歳を過ぎてから取り組もうかと思っていました。そしたら山口市でそういう役割が求められているとのことで、山口大にいたので山口はなじみがあるし、フットワークが軽い今やってみることにしました。大学時代に知り合った妻も研究者で、山口市に隣接する市のメーカーに勤めているので、山口に来るのはちょうどよかったです。
現在の状況・感想
山口市南部の食を通じた地域活性化に取り組んでいます。農業や漁業や畜産関係者に会って話を聞いて、それぞれの持つ価値やできることの範囲や何をどうしたいかという希望をかけあわせて商品開発をしています。商品ができたら、パッケージや販売場所なども含めて売るための情報提供もしています。 工程を改善したら結果は出てきます。商品開発はツールの一つであって、ゴールではない。人を活性化するのが仕事だと考えています。 たとえば山口市南部の名田島地区にある土井牧場ではミルクを使ったチーズケーキやシュークリーム、生キャラメルを作っています。名田島地区では、戦後まもなく、牛を飼い始めた農家がたくさんあったそうなのですが、今はもう土井牧場だけになってしまいました。土井牧場は肉用牛と、乳牛のホルスタインとより乳脂肪率が高くコクがあるミルクを出すジャージー牛を飼っています。土井さんはそのミルクを使って自己流でケーキを作っておられたので、それを製品的にも工程的にも洗練させようと、一緒に開発に取り組みました。製品そのものはもちろん、パッケージも試行錯誤して作りました。今は道の駅などに出していますが、ツール・ド・山口湾(サイクリングイベント)で立ち寄れるようにしたいと検討しています。また、現在は家族経営で、特にお母さんは牛の世話や農作業のほか、お菓子作り部門をひとりで切り盛りしているので、いずれは人を雇うことができるようになればいいですね。
地方への移住にあたり不安だったことは?
出張であちこちのまちの様子を見ていたし、山口は学生時代に過ごしたまちだったこともあり、あまり重く考えていませんでした。今は子供も生まれ、まわりの人たちの支えもあって、充実した毎日を送っています。
山口の魅力は?
人がよくて住みやすいと思います。南部は海があり、田畑が広がっていて開放的、いい意味で密度が低い。人間関係の縛りも少なくてやりやすいと感じます。子供の数に対して大人が多くて、目をかけてくれるのはありがたいですね。田舎の風景が自分にはマッチしています。 野菜や魚が新鮮でおいしい。栗の渋皮煮やおこわなど、昔はどこの家でもお母さんが普通に作っていたものがこの地域内ではよく目にとまります。心のこもったものがあふれていると思います。 昔から愛されているものは残すべきだと考えています。改善したり、昔のもの同士、あるいは昔のものと新しいものとを結びつけたりして活用の道を探るのはやりがいがあって楽しいです。山口に来てよかったと思っています。
山口に住んで戸惑ったことは?
住んでいるのが古い家なので寒いのと、カニが入ってくること、くらいですかね。特に困っていることはありません。
今後の展望
食を通じた地域活性化をしようということで取り組んでいる商品開発や流通についての学びは自分の財産にもなっています。信頼関係は会う回数に比例すると思っているので、こまめに会って話すように心がけています。その人間関係をもとに、これからは課題や要望や状況といった地域の食の情報がどんどん入ってくる仕組みを作りたいです。今も情報を集めて整理して必要だと思われるところに提供し、商品開発や工程改善につなげていますが、それがもっとスムーズにいくように、情報量も増えるような仕組みを考えたいです。 協力隊の任期終了後、どうするかを頭のすみに置きつつ、課題解決やアフターフォローに努めます。
移住を考えている人・移住してきた人にアドバイスを
まず自分を知ってもらうことが大切だと思います。そして常にウェルカムというオープンな気持ちでいること。物事に責任を持つことだと思います。