先輩移住者の声
いつ・どこから・なぜここに?
周南市出身の沖一希さんが医療や介護におけるAIの研究・開発を手がける会社「株式会社okeys.ai」を創業したのは2021年のこと。全ては学生時代のアルバイトで介護の現場の実情を知り、「介護の未来を変えたい」と思ったことから始まったそう。「高校で准看護師の資格を取り、山口市にある医療専門学校に進学しました。その時の訪問看護のアルバイトで、介護業界には問題点が山ほどあることを知りました。給料は低く、サービス残業も当たり前。人を増やす余裕もない……。周りを見渡すと、同じような問題を抱えた事業所が結構ありました。もともと数字に強かったので、この問題を解決するには『自分が経営する側に立つしかない』と思い、学校を中退し、コンサルタント業務を始めました」。
コンサル業務を通じて出会った介護業界の先輩社長に感銘をうけ、沖さんは有料老人ホームやデイサービスを手がける会社を設立。「直面したのは、やはり人手不足と労力に合わない給料問題です。スタッフの待遇を改善したいと考えた私は、負担を少しでも減らせるよう、AIの研究・開発をすると決めました」。そうして誕生したのが、株式会社okeys.aiだ。沖さんはAIによって負担が軽減できれば、介護士を目指す若者も増えると考える。
これからの目標・夢は?
「日本は高齢化社会の最先端。あらゆるデータを収集してAIを開発すれば、やがて世界中で起こるであろう高齢化問題に備えられます。日本が本気で取り組めば、介護におけるAIは世界1位になれるはず」。
高い目標を掲げ、沖さんが開発したのは高齢者運動支援AI「exer-kun」。高齢者の身体生理学的機能に沿って、最適な運動プログラムを提案し、3Dアバターによる運動支援を実現するAIアプリケーションだ。「現在、いくつかの施設で導入していただき、現場の声を参考にアップデートを重ねています。いずれこのAIを介護業界の当たり前にしたいです」。
山口市の魅力は?
山口市から世界に通用するAIの研究・開発に挑む沖さん。創業の地に山口市を選んだのにはいくつか理由があるという。「AI開発に携わるメンバーは、下関、東京、アメリカと所在地はバラバラ。つまり、場所を選ばずできるということ。だったら山口市の自宅で創業するのが一番と思いました。地元の周南市という選択肢もありましたが、私はとにかく山口市が好き。何でも揃っているし、道路もきれい。何より、湯田温泉があるのは大きかった(笑)。」
進学が縁で山口市に来た沖さんだが、その快適さにすっかり魅了されているようだ。「山口市の人は市外からやってきた人、新しいことを始めようとする人にも温かい。創業の支援も手厚いですし、私も創業広告支援補助金を活用しました」と沖さん。今後、仕事の都合で一時的に離れることがあっても、戻ってくる場所は山口市と話してくれた。山口市を拠点に世界へ―。その想いを胸に沖さんは今日もただ前に進む。